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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

Read 新書太閤記 (しんしょたいこうき) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 200,320 characters · 398 screens

Aozora Bunko

「ほう。もうそんな深更か、いや、何も覚えず、つい、意外な長座を」

座をさがりかけると、信長はまだ飽かない顔して、

「久太郎、何じゃ」

と、いう。

「いや明朝もお早い御登城、余り夜も更けましたことゆえ」

「ムム、そうか。筑前も旅装を解いたのみであったな。さだめし疲れていたろうに」

「なんの、余りの欣ばしさに、私こそ、御寝の時刻もわきまえず……」

と、堀久太郎の好意を謝して辞しかけながら、その堀久太郎へ、そっと訊ねた。

「今夕、宿所においておあずけ致した目録は、御覧に供えて下されたか」

「いや、それすらまだ、わが君のお目にかける遑もありません。何せい、これへあなた様を御案内して来るとすぐ引き続いてのお物語りで――」

「そうそう、これは筑前が落度でござった。では、お後にでも」

云いのこして、彼は、やがてそこを退出した。

その後で、堀久太郎と菅屋九右衛門の両名から、さきに秀吉から取次を託されていた献上品の目録を、信長の前へさし出した。

御前へ。

という一通のほかに、

御奥女房衆へ。――とある二通のそれを披いて、その品々の名目を読み入っていた信長は、

「ほう」

と、幾たびか、眼をみはっていた。