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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
Read 新書太閤記 (しんしょたいこうき) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 200,320 characters · 398 screens
「そこまでは、航路どれほどな日数を要するか」
「長崎から媽港あたりまでですと、順風でおよそ十四、五日には着きましょうが、それから先は天候まかせで、予定の日をもっては参るわけにゆきません」
「どうして」
「暴風雨にあえば、島に寄って隠れ、船が壊れれば、船を修理し、道程ではなく、度胸と根気の航海ですから」
「その方たちは、至極、審らかなことを申すが、いったいそのような航海をして、南蛮までも参ったことがあるのか」
するとまた三名は、曖昧な笑顔を示しているだけで、口をつぐみこんでしまった。お互いに答えを譲り合っているらしいのである。
「ないこともございませんが――」
と、やがて中の一名が思い切ったように答え出して、
「それを仔細に申し上げますと、だんだんわれわれの前身が――つまりおさとが知れて参ることになり――この儀は主人九鬼嘉隆よりも、平常、図に乗って自慢げに語ることは相成らぬと、固く戒められておりますことゆえ、ちと、どうも」
「これこれ、それは自慢顔に無用なおしゃべりは慎めといわれたのだろう。大隅殿(嘉隆)に叱られたらわしが詫びてやる。どういうことだ、語って聞かせい」