Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
Read 新書太閤記 (しんしょたいこうき) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 200,320 characters · 398 screens
やがて勝頼の前へ来て、奥の丸からのお使いという旨をこう訴えていた。
「何せい彼方の曲輪は女子のみでございますゆえ、こことは違い、泣き惑うてはただうろうろ、どう宥めても、悲嘆してやみませぬ。御台所の仰せ遊ばすには、いずれにせよ、最期はひとつ時、奥の丸の女子どもも、こなたへ共に立て籠り、侍衆とひとつにいたら、すこしは覚悟も早くつこうかとの御意にござります。おゆるしあれば御台所様のお座も、すぐこなたへお移しいたして参りますが、如何でございましょうか……」
勝頼は聞くとすぐ、
「それがよい。奥方も幼い者たちも、みな連れて、わしの側へ移って来い」
と、いった。
そのとき彼の周りには、ことし十六になる嫡男の太郎信勝だの、宿将真田昌幸、小山田信茂、長坂長閑などもいて、何か評議中らしかったが、茅村の局が立ちかける前に、信勝は、つと進んで、
「父上。それは却って、およろしくありますまい」
と、諫めた。
不機嫌に――というよりは、むしろ尖った眉、眼ざしを、子に向けて、
「なぜ、いけない?」
「……でも、女子たちがこれへ来ては、足手まといになります。悲嘆を見て、剛気な侍どもの心も乱れがちになります」