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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
Read 新書太閤記 (しんしょたいこうき) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 200,320 characters · 398 screens
秋山紀伊守。長坂長閑。小原下総守、同じく丹後守。跡部尾張、同子息。安部加賀守。鱗岳長老。
以下四十一名侍分。
ほか五十余名簾中上※(「藹」の「言」に代えて「月」、第3水準1-91-26)たち。
時刻はまさに巳刻(午前十時)ごろで、諸事終っていたという。
武田家はここに亡んだ。
長坂長閑、跡部大炊などが、勝頼を陥しいれた佞臣という云い伝えは嘘である。跡部は、最後になって逃げ腰を見せ、土屋惣蔵に殺されたが、それでもこの日まで勝頼のそばにいたし、長閑は立派に主君に殉じている。
また、勝頼の首を見て、信長が足蹴にして罵ったというのも嘘である。反対に慇懃床几を下って、その首に敬礼したという家康の人物を引きたてるために、捏造した徳川時代御用史家のこしらえ事にすぎない。
ほんとは、月の十四日、呂久川の陣中で、勝頼父子の首を実検し、そのとき、
「日本にかくれなき弓取の子も、運尽きては、こうなるものか。あわれよの」
と、左右の者へ呟いたという。
そして飯田の木戸に梟けさせたというのが、平凡なる真相であった。
火も涼し
東山梨の松里村へ、その日夥しい兵馬が入った。もちろん全軍織田色である。