Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
Read 新書太閤記 (しんしょたいこうき) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 200,903 characters · 400 screens
よく聞きおかれたい」
「……はッ」
「明智一勢には、軍旅を取りいそぎ、日ならぬうち、但馬より因幡へ入り候え。敵毛利輝元の分国、伯州、雲州へも、構えなく乱入に及ばれい。油断あるな、猶予あるな。早々、丹波へ帰国、陣用意をととのえ、高松城包囲中の羽柴秀吉にたいし、山陰道より側面牽制のふくみあって然るべし。――信長自身もやがて間もなく後詰に西下あらん。おくるるな、軍略の機を万が一にも外すな。……以上のとおりなおことばでありました」
光秀は、拝伏したまま、
「かしこまりました」
と、答えた。
それがわれながら余りに小声で卑屈らしく感じたのか、光秀は胸をあげて、与三の面を正視しながら、
「君前へは何とぞ宜しなに」
と、語音を昂げて云った。
青山与三は、その眼をすぐ逸らしてしまった。光秀の細かい神経は、それほど自分の面に、視るに耐えない陰があるのかと、反射的に傷みを抱いたが、
「では、御機嫌よく」
与三は起って、すぐ立ち帰った。
それを見送りに出る。玄関から立ちもどる。そのあいだの光秀には、人まばらな邸内を吹き抜ける夜風に浮いて、何となく踵が畳についていない。
「……つい数年前までは、お暇を賜わって帰る夜までも、立ち際にはまいちど顔を見せよ。