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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

Read 新書太閤記 (しんしょたいこうき) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 187,757 characters · 375 screens

Aozora Bunko

「入道じゃな」

玄蕃允は舌打ちした。

その人間が、常に叔父勝家のそばにいる浅見入道道西とわかると、すぐ彼がこれへ使者に来た用向きも、会わないうちに知れた気がしたからである。

「オ。……これにおいでで」

道西入道は、汗をかいていた。佇んでいた玄蕃允は陣幕のうちへ誘ないもせず、

「対馬どのか、なんじゃ」

膠もない眉を示した。

道西は、ここでは申し上げかねるが――という意を容子に見せたが、玄蕃允はそれに先手を打って、

「こよいは宿陣して、引揚げは明日と相成るぞ。――先刻、狐塚へも伝えておいたが」

と、余事には耳もかさぬ顔をした。

「伺いおりまする」

道西入道はいんぎんに礼を仕直した。そして、大岩山の大勝をくどくど祝した。玄蕃允は思う。こいつに粘られては堪らん。――そこでぶッきら棒に云い出した。

「叔父上には、まだ何か、取り越し苦労をなされて、御辺をこれへよこしたのか」

「御賢察のごとく、その宿営の儀を、いたくお案じで、夜ともいわず敵との切レを取って、わが本陣へ来るべし――との御意で」

「案ずるな、入道。玄蕃が麾下の精鋭は、進まば破竹、守れば鉄壁。未だかつて、辱を取った例しはない」