Japanese reading practice

Read classic Japanese books with furigana

ja-reading.com

Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.

しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

Read 新書太閤記 (しんしょたいこうき) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 187,757 characters · 375 screens

Aozora Bunko

と、歎声を発し、果ては、身もだえせぬばかり、玄蕃允の我意を罵っておられる――という帷幕の内紛が洩れるに至って、中軍の士気も何となく鬱々と重く、

「また、お使者が出た」

「や、またも」

と、頻々たる大岩山との往復に、将士までが胸をいためていた。

勝家も、この半日で、寿命をちぢめる思いをしたらしい。五たび目に使者の宿屋七左衛門の帰るのを待っている間などは、床几についていなかった。陣所は狐塚の一寺にあったが、そこの廻廊を、黙々と、めぐり歩いては、山門の方を見て、

「まだか。七左は」

と、幾たび、近衆に訊ねたことか知れない。

「――はや黄昏れるか」

せまる暮色まで、彼をいらだてた。が、日の長いさかりである。鐘楼のあたりにはなお夕陽が残っていた。

「宿屋どのが帰りました」

山門固めの武者が階下まで走って来て告げた。オオと白髪まじりの眉をしかめ、近づく影を見るや、

「七左。どうした?」

と、ひざまずく間も待たず、彼から訊ねた。

七左は、玄蕃允が会わぬというのを強って会って、縷々、お旨を伝えて来ましたが――結局、大垣にある秀吉がこの方面へ駈け向って来るには、ぜひとも、一両日は要し、また迅速に来たところで、長途につかれた兵、これを撃つのは、さして困難とは思われぬ。