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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
Read 新書太閤記 (しんしょたいこうき) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 187,757 characters · 375 screens
「はははは」
秀吉も笑い、利家も笑った。
「のう、又左。女は古い遺恨とてなかなか忘れおらぬとみゆる。よく、おぬしを借り物にして飲みに出たことを、まだ、今のように申す。……ははは、御内儀、お湯加減はよろしかったが、ちと、苦うござったぞ」
と、茶をもどして――
「が、むかしとちがう今日のはなし。御内儀に異存なくば、亭主にも否やあるまい。ぜひ北ノ庄へ同道な仕ろう。――御子息孫四郎どのは、おふくろ様の伽に、あとへ残し置かるるがよい」
談笑の間、事はすでに、きまったものと見、秀吉はどしどし独りぎめにきめていた。
「そこで、御子息はのこすも、御亭主にはぜひ、先駆けして欲しいものよ。又左は戦巧者、較ぶべき者はない。――そして、めでたく帰陣の日には、ふたたびここに立ち寄り、その折は、御内儀が迷惑と申されても、五三日も逗留、ずいぶんわがままもして見しょう所存じゃ。いまより馳走を頼みおくぞ。……どれ、明朝の発向、暇もなければ、今日はこれで」
と、秀吉は早や立って別れをつげた。
一家の者は台所口まで送って行った。その途中で、夫人は云った。
「孫四郎は、おふくろの伽に残せとの、仰せではございましたが、わたくしはまだそんな年でも、そんな淋しがりやでもございませぬ。