Japanese reading practice

Read classic Japanese books with furigana

ja-reading.com

Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.

しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

Read 新書太閤記 (しんしょたいこうき) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 187,757 characters · 375 screens

Aozora Bunko

そして、心ゆくまで、名残を惜しまれよと、折々ここへ情況を告げていたのである。

その若狭守の声だった。――それへ来たのは何者か、と室外で咎めている。答える者のことばには、新五郎でございまする、と聞えた。するとふたたび若狭守の声で、

「やっ、伜かっ……。参ったるか……」

と、いうのが聞えた。何か烈しくうけた感動を、抑えきれないような様子が、目に見ぬ室内の人々までハッとさせた。

「父上っ。……参りました」

次のことばが聞えたとき、酒席の杯は、悉く下におかれていた。

(はて。誰であろう?)

みな、眼と眼を見あわせた。勝家も、きき耳たてているふうだった。

――が、まもなく、静かな跫音が室のすぐ外まで来ていた。小島若狭守は自分のうしろに、ひとりの若者を連れていた。その若者のかぼそい武者姿を見たとき、勝家以下みな、ふたたび眼をみはってしまった。なぜならば、若狭守のうしろに見えたのは、久しい間、病身のため出仕もならず、家にあって療養していたため、誰の記憶にもいまは忘れられていた――若狭守の一男、当年十八歳の小島新五郎にちがいないからであった。

「おねがいにござりまする」