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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
Read 新書太閤記 (しんしょたいこうき) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 187,757 characters · 375 screens
そのための寸志の賀、これまた、お快くお納め賜わりまして、面目の至りにござりまする」
「疎遠なるこの家康へ、匠作にはわざわざこの度の賀を陳べに、お許をつかわされたとか。さてさて、ごていねい」
挨拶として率爾はないが、噛んでも味のない辞令一片である。石川数正もそうだったが、総じてここの家中には一種特別な家風が儼としてあるやに感じられる。
よく世間は対比していうのである。
徳川家に臨んだ者は、秋霜のごとき三河武士の軍紀と、弛みなき緊張にむすばれている組織力と、そして家康の、依然むかしを忘れぬ質実な風に打たれるということを。――また近頃、羽柴家の内を窺う者は、ひとしく秀吉の大気を称え、その陽々たる家族的な和こそ羨ましいものであるといい、ここの家中にある和と大気と若い者の力こそ、今日、彼に未来を嘱す人が日に増しつつある所以であるとも説く。
一は陰。一は陽。
また一は精神を髄とした理念的の組織体。一は人間――わけて情念の面を壁とし理想を柱として寄った巨大なる家族体。
こう観る者もありまた、何の武門、それはまだ主たる家康なり秀吉なりの個性の反映にすぎない。時と位置と対象が変れば、天相の晴曇によって、海の色や山のたたずまいも変るように、一定したものがあるわけでなく、帰すところ、相拠れる生命群が、相拠れる一方の生命群にたいし