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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
Read 新書太閤記 (しんしょたいこうき) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 187,757 characters · 375 screens
――この一便こそ、秀吉が清洲会議以後の受身と隠忍の、休息期を離れて、初めて天下の棋盤へぱしっと一石打って出た、消極から積極への一転を予告するものだった。
蜂須賀、脇坂が、清洲へ行ったわけは、清洲に在る織田信雄に稟議して、その承諾を求めるためであった。
理由は――
(信孝の暗躍は昨今いよいよ甚だしい。勝家らの軍備も今や顕然である)
(信孝は今もって三法師君を安土へ移し参らせず、岐阜の自城に抑留している)
(これ奪嫡の罪たり。また、清洲条約を公然と破棄するもの)
等々の箇条を実状に照らして、それらの因をなせる謀略の首魁勝家を討つには、まず北陸の勢が、積雪のために南下し得ぬうちに、これを果しておかねばならぬ――と、説かせたのであった。
信雄はもとより信孝に満腔の不平を抱いている。勝家にも快くないこと勿論だ。彼は決して、秀吉を信じ、秀吉を理解し、将来を秀吉に恃んでいるものではないが、勝家よりは遥かにましだとしているのである。自分の力ではどうにもならぬ信孝を除いてくれた上、云い得ないでいた不平まで、秀吉の軍が天下に布告してくれるものと歓んだのだ。何の否やのあるべき筈はない。