Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
Read 新書太閤記 (しんしょたいこうき) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 190,406 characters · 381 screens
恋という文字が、ぴったり来ないのも、それに起因していよう。女性の美へ崇拝的にひざまずく男を彼は蔑視する。恋愛を人生の第一義的に夢想したり神秘視して、甘い涙に遊戯する男どもを、彼は軽侮して虫酢の走るような眼で見る。そういう風に嫌いなのだった。
(……だが、寧子になら、ゆるしてもいいな。おれが、恋をしたといっても――)
好悪は人間の勝手である。彼も自分のことになれば、そんなふうに妥協した。寝つく前に、寧子の横顔を描きながら眠った。
翌日も、彼は非番。城内に、勤めはなかった。ほんとなら、きのう見ておいた桐畑の自分の屋敷を、さっそく手入れしたり、家具の備え付けをしたりするわけだったが、犬千代と出会う折を窺うため、城内にぶらぶらしていた。
犬千代はいつも、信長の側に、行儀よく控えている。藤吉郎とは深く口をきいたこともない。いつも上段からじろっと、信長の臣下を見ている眼は、信長以上に、不遜であった。
藤吉郎なども、時折、信長の前へ出て、何か献言でもしていると、側にいて聞いている犬千代が、にやりと、口端へ笑くぼを作る。
(猿がまた……)
と、いわないばかりに。何となく、人を見透しているような眼で。