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めいじびじんでん
新編 近代美人伝 (上)
長谷川 時雨
Read 新編 近代美人伝 (上) (めいじびじんでん) by 長谷川 時雨 (はせがわしぐれ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 129,076 characters · 256 screens
ごにて、少納言は霜ふる野辺にすて子の身の上成るべし、あはれなるは此君やといひしに、人々あざ笑ひぬ。
と同情している。
とはいえその間に女史一代の天華は開いた。
「名誉もほまれも命ありてこそ、見る目も苦しければ今宵は休み給へ」
と繰返し諫める妹のことばもききいれず、一心に創作に精進し、大音寺前の荒物屋の店で、あの名作「たけくらべ」の着想を得たのであった。けれどもまた、漸く死の到来が、正面に廻って来たのでもあったが、そうとは知りようもなく、ただ家の事につき、母を楽しませる事についても、一層気掛りの度合が増したものと見え、彼女は相場をして見ようかとさえ思ったのだ。
私は此処まで書きながら、私も母の望みを満そうと、そんな考えを起した事が一再ならずあったので、この思いたちが突飛ではない、全く無理もないことだと肯定する。その相場に関して、「天啓顕真術本部」という、妙な山師のところへ彼女がいったことから、すこしばかり恋愛をさがしてみよう。
荒物店を開いた時のことも書残してはならない。
――夕刻より着類三口持ちて本郷いせ屋にゆき、四円五十銭を得、紙類を少し仕入れ、他のものを二円ばかり仕入れたとある。