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さいせいのひのうみをながめて
日本プロレタリア文学集・38 プロレタリア詩集(一)
松本 淳三
Read 日本プロレタリア文学集・38 プロレタリア詩集(一) (さいせいのひのうみをながめて) by 松本 淳三 (まつもとじゅんぞう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 2,322 characters · 7 screens
再生の日の海を眺めて
俺は再び海を見るのだ!
ひろいひろい海を見るのだ!
それは、絵より詩より もっと大きい、もっと美しい
動いている海、輝いている海!
ああはっきりと映って来る海!
俺は岩に腰をおろした
やせた両手を胸に抱いた
「貴方の御出をどんなに待ったか知れません、
よくも貴方は、生きて再び私の姿を見て呉れます……」
海は大きい胸をたたいて
まず何よりもにっこりした
そして 鮮な潮の香りを
たえず――俺の体に送った
泣きたい 笑いたい 手をふりたい!
また身をぞんぶんに揺すりあげたい!
――この心
俺はこうした自由な体に
そして、ああ幾年ぶりにこの壮麗な海を見るのだ!
暗い地下室、つめたい板敷
(ここに来るものはすべての希望を後に見捨てる!)
あの恐ろしい牢舎の裡から
よくも俺だけは生きて出て来た!
あれ、真白いランチが走って来る
赤い三角帆のヨット、その上を散らばる鴎の群の軽快さ
波止場に並んで じっと動かぬ
赤い帆船のバウスプリットと 頑丈そうな錨、また錨でな
彼方――みどりに輝く遠い岬の だんだん畠と木立、白雲
青い マッチ箱のような望楼
そこに――かすかにかすかにひらめく旗!
俺は静かに眼をつむった
あとからあとから熱い涙が流れてやまない