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おやじのことば
日本プロレタリア文学集・38 プロレタリア詩集(一)
長沢 佑
Read 日本プロレタリア文学集・38 プロレタリア詩集(一) (おやじのことば) by 長沢 佑 (ながさわたすく) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 4,101 characters · 11 screens
親父の言葉
この頃の寒さに
足腰の痛みに
わしは憶い出すんだ
忰のことが
やっぱり親子のつながりだわい
「お前等にもわかる時が来る」
今になって彼奴の言葉が身に滲みてくる
彼奴の云ったこと
彼奴のやって来たこと
やっぱり貧乏人のやらねばならんことだったのだ
憶い出すと身震いがする
彼奴の入営した翌年
春の大争議にわしら四百の小作は
××川の土堤で警官と軍隊に取り巻かれた
鍬が飛んだ、石が飛んだ
剣が抜かれた
そしてわしまでしょっぴかれたんだ
地主小作の争いに軍隊が飛び出した
あれから村が変って来たんだ
わしのあたまも
嬶のあたまも
警察は地主の犬
幾どの争議でわし等は知った
そんだがわし等はたまげた
まったくたまげて終うた
軍隊も地主の犬――
わし等は一時この世がどうなるかと思った
忰がいった秋の演習に
ビラを撒いて憲兵に捕まった時
わしは彼奴と非呶い喧嘩をした
「戦争反対」――ビラの文句に
わしは嬶と一緒になってがなりつけた
「いまにわかる時が来る」
その時彼奴は悟を開いた禅坊主みたいに
平気なつらで云ったっけなあ
実際にあったんだ
この目でみたんだ
そして頑固な土百姓のあたまが悧巧になったんだ
わしを怒らした