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あねがわのかっせん
日本合戦譚
菊池 寛
Read 日本合戦譚 (あねがわのかっせん) by 菊池 寛 (きくちかん) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 154,771 characters · 313 screens
、衆を憚らず枕を持ち来らしめ、寝ながら万事を相談し、酒宴になるや秀吉は上方の者で華奢風流なれど、我は北国の野人であると皮肉って、梅漬を実ながら十四五喰い、大どんぶり酒をあおり、大鼾して臥した等々の話があるが、これ等は恐らく伝説であろう。しかし勝家の忿懣は自然と見えて居たので、秀吉は努めて慇懃の態度を失わずして、勝家の怒を爆発させない様にした。信長の領地分配の際にも、秀吉は敢て争わなかったのである。そればかりではない。勝家が秀吉の所領江州長浜を、自らの上洛の便宜の故を以て強請した時も、秀吉は唯々として従って居る。ただ勝家の甥の佐久間盛政に譲る事を断って、勝家の養子柴田伊賀守に渡すことを条件としたに過ぎない。しかしこの事は、秀吉の深湛遠慮の存する処であるのを、勝家は悟らなかった。危機を孕んだままに、勝家秀吉の外交戦は、秀吉の勝利に終ったが、収まらぬのは勝家の気持である。直後秀吉暗殺の謀計が回らされたのを、丹羽長秀知って、密かに秀吉に告げて逃れしめた。勝家の要撃を悟って、秀吉津島から長松を経て、長浜に逃れて居る。自分でこんな非常時的態度に出て居るので、勝家の方でも亦、秀吉の襲撃を恐れて、越前への帰途、垂井に留り躊躇する事数日に及んだ。