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あねがわのかっせん
日本合戦譚
菊池 寛
Read 日本合戦譚 (あねがわのかっせん) by 菊池 寛 (きくちかん) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 154,771 characters · 313 screens
これが有名な賤ヶ岳七本槍である。石川兵助、伊木半七、桜井左吉三人の働きも、七本槍に劣らなかったので、三振の太刀と称して、重賞あったと伝わって居る。
さて北軍の総大将勝家は、今市の北狐塚に陣して居たのであるが、盛政の敗軍伝わるや、陣中動揺して、何時の間にか密かに落ちゆく軍勢多く、僅か二千足らずになった。勝家嘆じて、盛政、血気に逸って我指揮に随わず、この結果となったのは口惜しいが、今は後悔しても甲斐なきこと、華かな一戦を遂げたる後、切腹しよう、と覚悟した。毛受庄助進み出て「今の世に名将と称せられる君が、この山間に討死あるは末代までの恥である。よろしく北の庄に入って、心静かに腹を召し給え」と勧め、自らは勝家の馬印をもって止り防がんことを乞うた。勝家、庄助の忠諫を容れ、金の御幣の馬印を授けて、馬を北の庄へと向けた。庄助、兄茂左衛門と共に三百騎、大谷村の塚谷まで引退いて寄せ来る敵と奮戦して、筒井の家来、島左近に討たれた。
勝家、其間に北の庄指して落ちたのであるが、前田利家の府中城下にさしかかった時は、従う者僅かに八騎、歩卒三四十人に過ぎない。利家招じ入れると勝家、年来の誼を感謝して落涙に及んだ。