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あねがわのかっせん

日本合戦譚

菊池 寛

Read 日本合戦譚 (あねがわのかっせん) by 菊池 寛 (きくちかん) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 154,771 characters · 313 screens

Aozora Bunko

此の頃の信長麾下の武将など、信長勢力の発展と共に、その所領は常にいろいろ変更されているのだから、近江で呉れたものを中国辺で呉れるものと思えば、心配することはないのである。とかく蘭丸と光秀とをいろいろからませている話は、若年にして本能寺で死んだ蘭丸の短生涯を小説化するため、大抵は仕組まれたもので、信長が蘭丸に光秀を折檻させたなども多分嘘である。戦国時代の武将が主君自らの心安立ての打擲なら、或は辛抱するかも知れないが、小姓などを使って殴られて、寸時も辛抱するわけはないと思う。そんな事があれば、その場で抵抗するか、或は切腹したに違いない。

しかし、光秀が信長に反いたのは、平生の鬱憤を晴すと同時に、あわよくば天下を取ろうとする大志が、あったに違いない。秀吉が、信長の横死を機会に信長の子孫を立てずに自分で天下を取ったのを、光秀はもっと積極的に、自分の私憤を晴すと同時に、天下を志したに違いない。「三日天下」など云う言葉が残っている以上、当時天下の人心は、光秀のそうした大志を知っていたに違いない。京師の地子銭を免除したり相当政治的なことをやった以上、信長を殺せば後は野となれ山となれ的な棄鉢でやった事ではない。