Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
にほんたんていしょうせつかいすんぴょう
日本探偵小説界寸評
国枝 史郎
Read 日本探偵小説界寸評 (にほんたんていしょうせつかいすんぴょう) by 国枝 史郎 (くにえだしろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 5,856 characters · 12 screens
一
一
二十八歳で博士号を得た、不木小酒井光次氏は、素晴らしい秀才といわざるを得ない。その専門は法医学、犯罪物の研究あるは将に当然というべきであろう。最近同氏は探偵小説の創作方面にも野心を抱き、続々新作を発表している。犯罪物の研究は、今や本邦第一流類と真似手のない点からも、珍重すべきものではあるが、その創作に至っては、遺憾乍ら未成品である。「二人の犯人」「通夜の人々」これらの作を読んでみても、先ず感じられる欠点は、先を急いで余悠がなく、描写から来る詩味に乏しく、謎を解く鍵には間違いはなくとも、その解き方に奇想天外がなく、矢張り学者の余技たることをともすれば思わせることである。但し市井の新聞記事から、巧に材料を選び出して、作の基調にするという、そういう際物的やり方には評者は大いに賛成する。豊富な資力、有り余る語学力、立派な邸宅、美しい夫人、よいものずくめの氏ではあるが、ひとつの病弱という悪いものがあって、氏を不幸に導こうとしている。併し病弱であればこそ、そうやって筆も執られるので、そうでなかったら勅任教授か何かで、大学あたりの教壇で干涸らびて了うに相違ない。