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にっき
日記
宮本 百合子
Read 日記 (にっき) by 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 35,462 characters · 72 screens
四月七日
起きて暫く机につき、午後Yと二人で胸つき坂を下り、水道橋の歯科に行く。杉山と云う花沢氏の助手、私の誠之時代一級下であった由、すっかり青年歯医者となって居、一本だけ抜いて呉れる。痛みはしないが、頭をこづくように力を入れ、いやな音がし、まるで暴力的だ。少し頭が変になってしまった。母上にそこで会う。今夜、A、林町に来る由。近頃頻りにAのことを思い、淋しいあわれな人と思う。心が妙に自発的でなく、こじくれて朗らかでないために、私共の生活はうまくゆかなかったと思う。例えばYを比べれば、Yの我ままらしい風はどうだ! まるで私を勝手に動かすように外では見えるが、実際は彼女が私の泰然さの上ではねて居るだけだ。我ままらしさなど、晴々とよろこび、憂える心があると何でもない。
Aは我ままも陰性にし、憤りも陰性にし、ついつい妙なことになってしまったのだ。寥しい妙な心持、良人であり、妻であり、離れることなど永劫なさそうに思えたものが、いつかこのように遠い、淋しい他人同士になるとは。ただの他人より淋しい他人同士になるとは。
四月七日(火曜)
この頃春さきの故か、又は違った原因からか、頭はっきりせず、とかく Sensual になって困る。