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きゅうぶんにほんばし
旧聞日本橋
長谷川 時雨
Read 旧聞日本橋 (きゅうぶんにほんばし) by 長谷川 時雨 (はせがわしぐれ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 158,045 characters · 322 screens
あんぽんたんは、自由に外へ出して遊ばせて貰えないので、物干にあがって空を見たりとんぼと話したり、瓦の間から、わらじ虫がゆっくり出てくるのを見ていたり、てんと虫を見つけたりする。そんなときに、ずっと向うの、蔵と蔵との間の低い屋根に、小さな小僧が這出して来て、重そうな布団をひっぱり出して干すのをよく見た。あの金物やの小僧は、なんで毎日ふとんをほすのかと、祖母にきくと、「寝しなに、お餅を煮て、あったかいのを、一切食べさせてやればよいのだが――としよりもいるのに。」
といったが、その年よりも、小僧も、景気のいい立食には並ばない。あたしは、すこし大きくなってから、また訊いた。
「なんで、あんなことをするの、みっともないのにね。」
いつまでも、立食にこだわるようだが、問は、やっぱりそれだった。
「お金があるのにおかしい。」
女中さんが笑ったのとは違って、子供には、家内そろって、みんな一緒でないのが訝しかったのだ。
「あすこは、古いお家だから、お精進日が多いのだろう。」
ああ、なるほど――と、ちいっぽけな者にも、その意味がわかるほど、古風な紙が台所にさげてある家があったのだ。