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きゅうぶんにほんばし
旧聞日本橋
長谷川 時雨
Read 旧聞日本橋 (きゅうぶんにほんばし) by 長谷川 時雨 (はせがわしぐれ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 158,045 characters · 322 screens
精進日覚、
×日 朝
×日 昼まで
×日 終日しょうじん
そんなふうに書いて張ってあるが、三十日間に、幾日もあきのない家もあった。御先祖さまの日、御先代の日、誰の日、彼の日、等々と、精進日つづきで、どんなけちんぼのとこでもお魚をつけるおさんじつ(一日、十五日、廿八日)まで、お精進が繰込んでいる。時によりものによって、魚の方が野菜ものより安価なことのある今日とは、魚の相場が大変違うので、大勢の人をつかう大家内では、巾着と相談の上から考慮された仏心であったかもしれないが、土地がらに似合わない、洋服を着て抱え車に乗る、代言人の、わたしの父の家でさえ、毎月晦日そうじがすむと、井戸やおへっついを法印さんがおがみに来て、ほうろくへ塩を盛り御幣をたてたりしても、父も別段やめろともいわなかったようだ。
その法印さんは眼のくぼんだ、色の黒い人で、小柄で、髪の毛をチョンボリ結んでいたようだったが、はっきりとしない。神田今川小路の方の河岸つきの、引っこんだところに閑寂な小庭を持って、茶席めいた四枚障子の室がとっ附きにあって、その室のうしろは土蔵で、蔵住居らしかった。