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めいじげきだん ランプのもとにて
明治劇談 ランプの下にて
岡本 綺堂
Read 明治劇談 ランプの下にて (めいじげきだん ランプのもとにて) by 岡本 綺堂 (おかもときどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 167,283 characters · 329 screens
市村座は時蔵、芝鶴、吉右衛門、勘五郎などという顔ぶれで開場していたが、余りに思わしい成績を収め得なかった。東京座は九月から左団次一座が開場していた。
東京座は神田の三崎町にある大劇場で、明治三十年三月の開場式には団十郎が出勤して、「敷皮の曾我」の重忠、「国姓爺合戦」の和藤内、「二人袴」の高砂尉兵衛などを勤めたのであるが、その時代としては何分にも交通不便利の場所にあるので、その後とかくにはかばかしいこともなくて、六、七年をどうやらこうやら持ちこたえているという有様であった。そこへ明治座休場中の左団次一座が乗込んで開演することになったのである。団菊の歿後はなんといっても左団次のひとり天下で、九月にはその一座に時蔵、高麗蔵、家橘などが加入して、一番目に「黄門記」、中幕に「楠正成」、二番目に「松田の喧嘩」を出し、十一月には左団次一座に芝翫、猿之助、源之助が加入して、一番目に「碁盤忠信」、中幕に「日吉丸稚桜」、二番目に「柳沢騒動」を出していたが、前後二回ともに景気は思わしくなかった。殊にこのごろに至って左団次の活気の著るしく衰えたのが眼立って来た。由来、左団次はその活気ある舞台を売り物にしていたのであるに、その衰えが眼立つようになっては、単に舞台の上がさびしいばかりでなく、団菊の死におびえている人々に一種の暗い予感