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めいじげきだん ランプのもとにて
明治劇談 ランプの下にて
岡本 綺堂
Read 明治劇談 ランプの下にて (めいじげきだん ランプのもとにて) by 岡本 綺堂 (おかもときどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 167,283 characters · 329 screens
その画家は豊原国周を第一として、次に梅堂国政、楊州周延などで、芳幾はあまり錦絵を描かないようであった。錦絵とはまことに能く付けた名で、その美しいことは言うまでもないが、殊に各座の新狂言の似顔絵を絵双紙屋の店先にずらりと列んで懸けたのを仰ぎ見た時には、花といおうか紅葉といおうか、わたしらのような子供でも実に恍然として足を停めずにはいられなかった。つまり今日の絵葉書屋とおなじ理窟であるが、ほん物の写真よりも似顔絵の方が色彩の絢爛を極めているので、人の眼を強く惹き付けたのであった。
春雨や傘さして見る絵双紙屋 子規
こういう風情は現代の若い人たちには十分に会得されまいと思う。それから歳の暮になると、絵双紙屋の店にはいろいろの双六がかけられる。これも道中双六や武者双六や教訓双六や、その種類は数々あったが、やはり歌舞伎狂言の双六がそのなかの錦であった。大判物、中判物、その大小はいろいろあるが、要するに、似顔絵を小さくして綴り合わせたようなもので、歌舞伎双六はどうしても十銭以上、上等は二十銭、三十銭、五十銭ぐらいの物もあった。その頃の三十銭、五十銭といえばかなりの高価で、前にいった芝居小説の草双紙ですらも、二冊つづき五銭が普通の時代において、三十銭以上の双六などがよく売れたものだと思うが、今日と違って、歳暮や年