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はるのつちへ
春の土へ
今野 大力
Read 春の土へ (はるのつちへ) by 今野 大力 (こんのだいりき) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 734 characters · 2 screens
早く春になったら、どんなに楽しい事だろう、日向の小高い丘に軟く暖く香高い土があらわれて、蕗の薹が上衣を脱ぎ、水晶の様に澄んだ水が、小川を流れ、小魚がピチピチ泳いでいる。
そして先ず一番に「春である」事を思わせる。
一日一日暖くぽかぽかとほてって来る陽を背に受けて、私は蘇る様な歓喜に酔う。
からだに満ちて来る力が力の精がどこから来て宿るのであるかああそれはあの黒土の香りの中から新鮮な創造の春の自然から、いつか私の魂に取入れられる。そして貧しき農夫の子であった私が、生きようとする力は而も限りなき永遠への思慕の念は純真なる求道士の如くに一途精進の心に燃ゆる。
土は私の揺籃の地である、無限に拡がりゆく力の故郷である。土を見る歓び、土に生くる人々の健康を寿ぐ歓び、それは皆地上の最上の歓喜であろう。
土を信ずる人々には、何の苦悶もなく(若し農民が餓死する時私も土に還るであろう)
春が来る、そして地上の愛と憎みが再び花園の花の様に開くであろう。人も又花の如く美しく咲くを望む、私も又彼女も又それを望む人生は春秋に終る花の延長に外ならない。
おお、美しくあれ青春の男らよ、女らよ、けれど我等は呪われの子人の子、農民の子、反逆の子。