Japanese reading practice

Read classic Japanese books with furigana

ja-reading.com

Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.

はんしちとりものちょう

時代推理小説 半七捕物帳(一)

岡本 綺堂

Read 時代推理小説 半七捕物帳(一) (はんしちとりものちょう) by 岡本 綺堂 (おかもときどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 158,540 characters · 319 screens

Aozora Bunko

二

二

七蔵の主人の小森市之助というのは、今年まだ二十歳の若侍であった。かれは御用の道中で、先月のはじめに江戸をたって駿府へ行った。その帰りに、ゆうべは三島の本陣へ泊ると、道楽者の七蔵は近所を見物するとか云って宿を出て、駅の女郎屋をさがしにゆく途中で、一人の男に声をかけられた。男は三十五六の小粋な商人風で、菅笠を手に持って小さい荷物を振り分けにかついでいた。彼は七蔵を武家の家来と知って呼び止めたのであった。

男は七蔵になれなれしく話を仕掛けた。ここの駅では何という宿がよいかなどと訊いた。そのうちに男はそこらで一杯飲もうと誘った。渡り者の七蔵は大抵その意味を察したので、すぐに承知して近所の小料理屋へ一緒に行った。ずうずうしい彼は、ひとの振舞い酒を遠慮なしに鱈腹飲んで、もういい心持に酔った頃に、かれを誘った旅の男は小声で云った。

「時に大哥。どうでしょう。あしたはお供をさせて頂くわけには……」

男は関所の手形を持っていないのである。こういう旅人は小田原や三島の駅にさまよっていて、武家の家来に幾らかの賄賂をつかって、自分も臨時にその家来の一人に加えて貰って、無事に箱根の関を越そうというのである。