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はんしちとりものちょう
時代推理小説 半七捕物帳(一)
岡本 綺堂
Read 時代推理小説 半七捕物帳(一) (はんしちとりものちょう) by 岡本 綺堂 (おかもときどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 158,540 characters · 319 screens
「おまえもこうして働いているようじゃあ、徳蔵とよっぽど心安くしていると見えるな」
「ええ。ときどき遊びに行くもんですから」と、伝介はあいまいな返事をしていた。
葬式が済んで寺の門を出ると、この頃の春の日はもう暮れかかっていた。帰るときに会葬者は式の通りの塩釜をめいめいに貰ったが、持って帰るのも邪魔になるので、半七はその菓子を山城屋の小僧にやった。そうして、そばにいた利兵衛にささやいた。
「番頭さん。済みませんが、少しお話し申したいことがありますから、小僧さんだけを先に帰して、おまえさんはちょいと其処らまで一緒に来て下さいませんか」
「はい、はい」
云われた通りに小僧を帰して、利兵衛は素直に半七のあとに付いてくると、半七はかれを富岡門前の或る鰻屋へ連れ込んだ。ここでは半七の顔を識っているので、丁寧に案内して奥の静かな座敷へ通した。半七も利兵衛も下戸であったが、それでもまず一と口飲むことにして、猪口を二、三度やり取りした後に、酌の女中を遠ざけて、半七は小声で云い出した。
「さっきも云う通り、徳次郎の一件はまあ百両で内済になって結構でしたよ」
「そうでございましょうか」