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はんしちとりものちょう

時代推理小説 半七捕物帳(六)

岡本 綺堂

Read 時代推理小説 半七捕物帳(六) (はんしちとりものちょう) by 岡本 綺堂 (おかもときどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 196,831 characters · 396 screens

Aozora Bunko

「長三郎、貴公は何しに来た」と、幸之助は眼を嶮しくして云った。

「姉を探しに来ました」と、長三郎は悪びれずに答えた。

「姉はいない」

「きっと居ませんか」

「居ない。帰れ、帰れ」

「帰りません。姉を渡して下さい」

「姉はいないと云うのに……。強情な奴だな」

「ここにいなければ、どこにいるか教えてください」と、長三郎は一と足進み寄って訊いた。

「貴様……。眼の色をかえてどうしようと云うのだ」

そういう幸之助の眼の色もかわっていた。強いて手向かいすれば斬ってしまえと、父からかねて云い付けられているので、長三郎は一寸も退かなかった。彼は迫るように又訊いた。

「姉はここにいるか、さもなければ、あなたが何処へか隠してある筈です。教えて下さい」

「知らない、知らない」と、幸之助は罵るように云った。

双方の声がだんだんに高くなったので、内から又ひとりの侍が出て来た。それは理右衛門であった。

「喧嘩をしてはいけない。双方とも待て、待て」と、彼はうしろから声をかけた。

その声を聞くと、幸之助は俄かに向き直った。

「さては今井氏、貴公がこの長三郎を案内して来たのだな」

「いや、違う、長三郎は勝手に来たのだ」