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はんしちとりものちょう

時代推理小説 半七捕物帳(六)

岡本 綺堂

Read 時代推理小説 半七捕物帳(六) (はんしちとりものちょう) by 岡本 綺堂 (おかもときどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 196,831 characters · 396 screens

Aozora Bunko

天神様かえ」と、半七は笑いながら訊いた。

「あしたはお約束で出られないもんですから、繰り上げて今日ご参詣にまいりました」と、お蝶も笑いながら答えた。

半七は何か思い出したように、お蝶のそばへ摺り寄った。

「だしぬけに変なことを訊くようだが、お俊は相変らず達者かえ」

「あら、御存じないんですか。お俊ちゃんはこの六月に引きましたよ」

「ちっとも知らなかった。誰に引かされて、どこへ行った」

「深川の柘榴伊勢屋の旦那に引かされて、相生町一丁目に家を持っていますよ」

「相生町一丁目……。回向院の近所だね」

「そうです」

「お俊は薄あばたがあったかね」

「いいえ」

お蝶は小三をかえりみると、彼女もうなずいた。

「お俊ちゃんは評判の容貌好しで、あばたなんかありませんわ」

「そうだな」と、半七もうなずいた。

芸者たちに別れて歩き出すと、松吉はあとを見かえりながら云った。

「だれの眼も違わねえもので、あの女たちに逢った時に、わっしもふっと思い出しました。例の女は柳橋のお俊に似ていると……。だが、今の話じゃあお俊に薄あばたはねえと云う。おなじ仲間が云うのだから間違いはありますめえ。それを聞いてがっかりしましたよ」