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はんしちとりものちょう
時代推理小説 半七捕物帳(六)
岡本 綺堂
Read 時代推理小説 半七捕物帳(六) (はんしちとりものちょう) by 岡本 綺堂 (おかもときどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 196,831 characters · 396 screens
それから手代の幾次郎ですが、主人の遠縁の者だという事になっているが、実は番頭の息子だそうです。それにはちっと訳があるので……」
今から二十年ほど前に、和泉屋の番頭勇蔵が入牢した。それは紀州家か尾張家かへ納めた品々に、何か不正のことがあったと云うのである。その吟味中に勇蔵は牢死した。しかも世間の噂では、主人の罪を番頭がいっさい引き受けて、主人はなんにも知らない事に取りつくろったのであると云う。その忠義の番頭勇蔵のせがれが幾次郎で、当時はまだ二、三歳の子供であったのを、母のおみのが引き連れて、甲州の身寄りの方へ立ちのいた。もちろん和泉屋では相当の扶助をしてやったに相違ない。
その幾次郎が八つか九つに成人した時に、恐らく前々からの約束があったのであろう。江戸へ出て来て旧主人の和泉屋に奉公することになった。表向きは遠縁の者だと云うことにして、主人も特別に眼をかけて使っていた。和泉屋に子が無いので、番頭の忠義に報いるために、或いはこの幾次郎を養子にするのでは無いかと云う者もあったが、その想像は外れて、主人の甥の清七が十三の年から貰われて来た。幾次郎はやはり奉公人として働いていて、彼が堅気の店の者に似合わず、稽古所ばいりをしたり、折りおりには新宿の遊女屋遊びをしたりするのを主人が大目に見ているのも、亡父の忠義を忘れ