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はんしちとりものちょう
時代推理小説 半七捕物帳(六)
岡本 綺堂
Read 時代推理小説 半七捕物帳(六) (はんしちとりものちょう) by 岡本 綺堂 (おかもときどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 196,831 characters · 396 screens
家の前に売り物の札が付いて居ります」と、文右衛門はまじめに答えた。
「伊豆屋の若い者はどうしたね」
「きのうまで手前共に逗留でしたが、いつまでも手がかりが無いので、いったん江戸へ帰ると云って、今朝ほどお立ちになりました」
「それじゃ行き違いになったか」
釜屋の亭主を帰したあとで、半七は善八にささやいた。
「おめえは友蔵の家を知っているだろう。あいつは今夜、家にいるかどうだか、そっと覗いて来てくれ」
「ようがす」
善八はすぐに出て行った。
「友蔵の奴を挙げますかえ」と、幸次郎は訊いた。
「あいつ、どうも見逃がせねえ奴だ。不意に踏み込んで調べてやろう。先月の晦日ごろに江戸へ出たといい、景気よく銭を遣っているといい、なにか曰くがあるに相違ねえ」
やがて善八は帰ってきた。
「友蔵は家で酒を喰らっていますよ」
「友達でも来ているのか」
「それがね。髪も形も取り乱しているが、ちょいと踏めるような中年増に酌をさせて、上機嫌に何か歌っていましたよ」
「それが例の幽霊かな」と、幸次郎は云った。
「なるほど蒼い顔をしていたが、確かに幽霊じゃねえ。第一、友蔵の娘という年頃じゃあなかった」
「よし」