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はんしちとりものちょう
時代推理小説 半七捕物帳(六)
岡本 綺堂
Read 時代推理小説 半七捕物帳(六) (はんしちとりものちょう) by 岡本 綺堂 (おかもときどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 196,831 characters · 396 screens
これで手妻の種は判ったが、さてその女がこの一件に係り合いがあるかねえか、その判断がむずかしいな」
小声で云いながら、二人は葭簀をかき分けて出ると、そこには一人の女が窺うように立っていたので、物に慣れている彼等も少しくぎょっとした。女は十六、七で、顔に薄い疱瘡の痕をぱらぱらと残しているのを瑕にして、色の小白い、容貌の悪くない娘であった。
「お前はどこの子だえ」と、半七は訊いた。
「はい。そこの……」と、娘は門内を指さした。
門をはいると左側に花屋がある。彼女はその花屋の娘であるらしい。半七はかさねて訊いた。
「今朝はここに女が死んでいたと云うじゃあねえか」
「ええ」と、娘はあいまいに答えた。
「その後に誰か死骸をたずねに来たかえ」
「いいえ」
「死骸は奥に置いてあるのかえ」
「ええ」と、彼女は再びあいまいに答えた。
とかくにあいまいの返事をつづけているのが、半七らの注意をひいた。亀吉はやや嚇すように訊いた。
「おめえに両親はあるのか。おめえの名はなんと云うのだ」
母のお金は先年病死した。父の定吉は花屋を商売にしている他に、この寺内が広いので、寺男の手伝いをして草取りや水撒きなどもしている。