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はんしちとりものちょう
時代推理小説 半七捕物帳(四)
岡本 綺堂
Read 時代推理小説 半七捕物帳(四) (はんしちとりものちょう) by 岡本 綺堂 (おかもときどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 217,272 characters · 434 screens
「いつ頃帰るか、判らないかね」
「この頃はちょいちょい出るので、いつ帰るか判りませんが……。なにか御用ですか」
「むむ、奉納の大きい物を頼みてえのだが、親方が留守じゃあ仕方がねえ。また出直して来よう。おかみさんもいねえかね」
「おかみさんは……。四、五年前になくなりました」
「じゃあ、親方は一人かえ。子供は……」
「娘があります」
「娘は幾つだ」
「十八です」
「いい女かえ。おめえは様子がいいから、もう出来ているのじゃあねえか」
「冗談でしょう」と、職人は大きい声で笑い出した。
半七も笑ってそこを出たが、五、六間ほど行き過ぎて大津屋をみかえった。
「おい、亀。少し忙がしくなって来たが、大津屋の亭主と娘について出来るだけのことを洗ってくれ。万次郎の方は松に云いつけて調べさせろ。丸多の亭主は半気違げえだから、何処にどうしているか、差しあたりは手の着けようがねえ。それから如才もあるめえが、大津屋を調べるついでに、女の絵かきの探索も頼むぜ」と、云いかけて半七は急に又笑い出した。「やあ、いけねえ、いけねえ。おれもよっぽど焼きがまわったな。今あの店で、ここの絵馬をかく人は誰だと訊いてみりゃあ好かったに……。