Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
ザボンのはなのさくころ
杉田久女随筆集
杉田 久女
Read 杉田久女随筆集 (ザボンのはなのさくころ) by 杉田 久女 (すぎたひさじょ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 15,008 characters · 31 screens
英彦山に登る
私は今年英彦山に五六度登った。
或人々は彦山はつまらぬ山だという。
成程銅の大鳥居から四十二丁の上宮迄は樹海の中を登りつめるので、見はらしはなし、谿流は添わず、大英彦全体を眺める事の出来ない凹凸の多い山なので、ひととおりの登山丈では、一向変化のないつまらぬ山と思えるのもむりはない。
だが、彦山に一夏を過して、古老から彦山伝説のかずかずをきかせられ、或は絶頂の三山を高嶺づたいによじ、或は豊前坊から北岳の嶮をよじ、或は南岳の岸壁を下りて妙義にも比すべき巨岩の林立を谷間に仰ぎ等した私は、彦山というものにいつか異常な興味と親しみを見出す様になってしまった。
彦山には雲仙程の雄大も、国際的なハイカラ味も近代的な設備もない。彦山は天狗の出そうな感じ、怪奇な伝説の山である。彦山を代表するものは山伏道と、かの平民毛谷村六助とである。彦山権現の御加護によってかたき討ちの助太刀をした六助の姿。まずこんなものの古くさい匂いが英彦山のかもす空気であろう。
三千八百坊が伽藍をつらねていたという名高い霊場も今はおとろえ切って、わずかに山腹の石段町に百余坊。それは皆山伏の末えいで、旅館になり、農になり或は葛根をほってたつきとしている。