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とうりんどうのさとうづけ
桃林堂の砂糖づけ
中谷 宇吉郎
Read 桃林堂の砂糖づけ (とうりんどうのさとうづけ) by 中谷 宇吉郎 (なかやうきちろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 2,306 characters · 5 screens
シカゴに、フルーツ・ケーキをつくっている会社がある。菓子の名はサラ・リイといい、アメリカでも、一流品とされている。もっとも大量生産としての一流品である。
そこの主人が、細君をつれて、先日、日本へ遊びに来た。シカゴにいた頃、家庭的に親しくしていたし、その後も娘たちをたいへん可愛がってくれていたので、大いに歓迎しようということになった。
しかし厄介なことには、相手は非常な金持ちで、世界中を遊び廻るのが道楽である。ヨーロッパはもう見あきているので、昨年は、アフリカを一廻りした。アルジェリアから始めて、コンゴを通り、南端の喜望峰まで、主なところは全部廻ったそうである。
今年は、欧州の東部から、印度、マレーなどを廻って、日本が旅程の最後になっていた。もうたいていのことには驚かなくなっているにちがいない。それで何かかわったところと考えていたところ、たまたま暮しの手帖の大橋鎮子さんから、八尾の桃林堂の話をきいた。
サラ・リイの工場では、フルーツ・ケーキを焼く炉は、長さ五百メートルくらいある。その中を、幅五メートル近いベルトが流れている。ケーキはそのベルトいっぱいに並べられ、この五百メートルの間を流されていくうちに、焼き上がる仕掛けになっている。