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くわのきものがたり
桑の木物語
山本 周五郎
Read 桑の木物語 (くわのきものがたり) by 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 39,815 characters · 79 screens
、自分には責任があるということを忘れずに、しっかりやって呉れ」
悠二郎はいやな気持になった。現在でさえ堅苦しくって息が詰りそうなのに、若君のお相手になんぞあがったらどうしよう。とんでもない、これは断わらなければいけないと思った。しかし花田先生は自分に反感をもっている、このひとに頼んでもだめだと考えて黙っていた。
「これで話は終りだ、おまえには少し厳しくし過ぎたかもしれないが、その代り、――これをみろ」
花田先生はこう云って、自分の袴の裾を捲って両足の脛を出してみせた。まばらに毛の生えた、やはり色白の向う脛に、両方とも二寸ぐらいの幅で、赤く腫れたような条が四五段ずつ痕になっていた。――なんのことかわからない、ことによるとそれが血脚気というものかも知れない、悠二郎はそう思った。そしてその栗饅頭を貰って、まもなく家へ帰った。
あとで聞いたところによると、花田先生は国許の藩校の教頭を命ぜられたのだそうである。代りの中野健之助という教官が来たが、これは若いのに眼鏡をかけた、土色めいた顔の少しむくんだ、老人のように咳ばかりしている先生だった。――悠二郎がまわりの者を小突いたり、髪毛をひっ張ったり、いきなり頬ぺたへ墨をぬたくったりして騒がせても、眼鏡をかけたそのたるんだような顔でこっちを覗いて、「どなたですか、どなたです