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さくらじま
桜島・日の果て・幻化
梅崎 春生
Read 桜島・日の果て・幻化 (さくらじま) by 梅崎 春生 (うめざきはるお) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 169,810 characters · 345 screens
宇治は咄嗟にそう思い、表情をやわらげて他の事を聞こうとした。
「先刻――一発で殺したのか」
「一発で殺しました」
「何とか言ったか」
「何も言いません」
頑な口調であった。一寸扱いかねる感じだったが、宇治は何か放っておけない気持でなお執拗に言葉をついだ。
「何処を射ったんだ」
「女の頭を、射ちました」
「女?」
宇治は愕然として立ちすくみ斜面へ二三歩よろめいた。道は土手の上まで来ていたのだ。白い薄光が彼の網膜にぼんやりひろがって来た。
河であった。
カガヤン渓谷に連なる一支流であるらしく、磧の中を白い水は泡立ちつつ流れ、果ては夕霧の中に消えていた。視野はことごとく黄昏のいろである。土手から磧にかけて、サンホセの部隊にも咲いていたあの黄色の花が点々と咲き乱れていた。バンカが幾つも岸につながれ、水牛が一頭磧の水溜りに半身を浸し、青く淀んだ水の匂いがふと鼻をうったが、風がごうごうと鳴りながら川瀬の音にまじった。宇治は土手の鼻に立ち、その景観を展望しながら、歯ぎしりしたくなるような焦燥感が胸一ぱいに拡がって来るのを意識した。
(何処かに計算間違いがある)
それは何処で間違っているのかは判らない。