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さくらじま
桜島・日の果て・幻化
梅崎 春生
Read 桜島・日の果て・幻化 (さくらじま) by 梅崎 春生 (うめざきはるお) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 169,810 characters · 345 screens
「いえ。初めて」
「この航空路は、割に危険なんですよ」
丹尾はエンジンに眼を据えながら言った。
「この間大分空港で、土手にぶつかったのかな、人死にが出たし、また鹿児島空港でも事故を起した」
「ああ。知っている。新聞で読んだ」
五郎はうなずいた。
「着陸する時があぶないんだね。で、あんたはなぜ鹿児島に行くんです?」
「映画を売りに。おや。だんだん殖えて来る」
五郎もエンジンを見た。細い黒筋がだんだん太くなる。太くなるだけでなく、途中で支流をつくって、二筋になっている。五郎は眼を細めて、その動きを見極めようとした。しかし飛行機の知識がないので、それが何であるか、何を意味するのか、判断が出来かねた。五郎はつぶやいた。
「あれは流体だね。たしか」
「油ですよ」
丹尾はへんに乾いた声で言った。
「こわいですか?」
五郎は少時自分の心の中を探った。恐怖感はなかった。恐怖感は眠っていた。
「いや。別に」
五郎は答えた。
「映画を売りに? 映画って売れるもんですか?」
「売れなきゃ商売になりませんよ」
丹尾はまた短い笑い声を立てた。
「映画をつくるのには金がかかる。売って儲けなきゃ、製造元はつぶれてしまう」