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さくらじま
桜島・日の果て・幻化
梅崎 春生
Read 桜島・日の果て・幻化 (さくらじま) by 梅崎 春生 (うめざきはるお) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 169,810 characters · 345 screens
あの徳利には四合位入るだろう。そうすると既に三升ほどの酒が皆の腹中に分れて入っているわけだが、平均一人当りどの位飲んだのだろうと頭の中で計算してみたが、どうも何度やっても途中でごちゃごちゃになる。いよいよ酔いが廻って来たらしかった。
座も段々乱れて来る気配があった。
娘が死んだとて直接は関係の無い、恐らくは悲しくも嬉しくもない連中が、落着かぬ気持で酒を飲んでいるうちに段々いい機嫌になっては来たものの、騒ぐわけには行かんという反省が内向して変な具合になり、酔いがこじれたままで一挙にふくれ上って来るようすであった。
何時の間にか、あの体の小さな女中も入って来て、酒を注いで廻って居る。何が楽しいのかにこにこしたり冗談口を利き合ったりしている。先刻まであんな鹿爪らしい顔をしていた癖に、度し難い奴だと私はぼんやり頭のすみで考えて居たようである。モナリザのおばさんもあちこちで盃を舐めたと見えて、顔が斑に赤くなっている。皆の話し声が段々高くなって来た。天願氏も酔っぱらったと見えて隣の男と何か話しながら笑っている。額に脂が出ていて、電灯が小さく映っているのがいやらしかった。