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さくらじま
桜島・日の果て・幻化
梅崎 春生
Read 桜島・日の果て・幻化 (さくらじま) by 梅崎 春生 (うめざきはるお) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 169,810 characters · 345 screens
今日は麦酒の配給があったと言って、交替に来た兵の中には、目縁を赤くしているのも居た。私が当直に立っているとき、交替時の直ぐ前だったか、緊急信が一通来た。私がそれを訳した。
居住区の方に戻りながら、私はその電報のことを考えていた。それは決定的な内容を持った電報であった。
居住区に入って行くと、通路の真中に卓を長く連ね、両側にそれぞれ皆腰かけ、卓の上は麦酒瓶の行列であった。煙草の煙が奥深くこもり、瓶やコップの触れる音がかちかち響いた。奥の方に通り抜け、私の席についた。食器に麦酒がトクトクとつがれるのを眺めながら、私は此の騒然たる雰囲気に何か馴染めない気がした。卓が白い泡で汚れている。私は上衣を脱ぐと、口に食器を持って行った。生ぬるい液体が、快よい重量感をもって、咽喉を下って行った。
私の前には、電信の先任下士と吉良兵曹長が腰をおろしていた。先任下士は頬を赤くしていたが、吉良兵曹長はむしろ青く見えた。そしてその話し声がふと私の耳をとらえた。
「大きなビルディングが、すっかり跡かたも無いそうだ」
「全然、ですか」
「手荒くいかれたらしいな」
「どこですか」
「広島」