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さくらじま
桜島・日の果て・幻化
梅崎 春生
Read 桜島・日の果て・幻化 (さくらじま) by 梅崎 春生 (うめざきはるお) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 169,810 characters · 345 screens
あるからといって勝手には食えないさ」
「そうね。可哀そうね。――ほんとに可哀そうだわ」
妓は顔をあげて、発作的にわらい出した。しかしすぐ笑うのを止めて、私の顔をじっと見つめた。
「そして貴方は、そこで死ぬのね」
「死ぬさ。それでいいじゃないか」
暫く私の顔を見つめていて、急にぽつんと言った。誰に聞かせるともない口調で――
「いつ、上陸して来るかしら」
「近いうちだろう。もうすぐだよ」
「――あなたは戦うのね。戦って死ぬのね」
私は黙っていた。
「ねえ、死ぬのね。どうやって死ぬの。よう。教えてよ。どんな死に方をするの」
胸の中をふきぬけるような風の音を、私は聞いていた。妓の、変に生真面目な表情が、私の胸の前にある。どういう死に方をすればいいのか、その時になってみねば、判るわけはなかった。死というものが、此の瞬間、妙に身近に思われたのだ。覚えず底知れぬ不吉なものが背骨を貫くのを感じながら、私は何気ない風を装い、妓の顔を見返した。
「いやなこと、聞くな」
紙のように光を失った顔から、眼だけが不気味に私の顔の表情につきささって来る。右の半顔を枕にぴたりと押しつけた。顔がちいさく、夏蜜柑位の大きさに見えた。