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しょくぶついちにちいちだい
植物一日一題
牧野 富太郎
Read 植物一日一題 (しょくぶついちにちいちだい) by 牧野 富太郎 (まきのとみたろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 160,011 characters · 312 screens
風流で盗賊防ぐ思い付き
これは最も有効な植物利用の防盗策であると信ずる。あの逆に曲がっている無数の鉤刺は強く固く、この鋭い鉤刺には何物も敵し難く煩わしくよく引っかかりけっして脱することが出来ない。そして冬月その葉の小葉は落ち去ってもなお鉤刺を甲うその主軸ならびに枝軸には依然としてその鉤刺が残り、その刺体は確かと茎に固着して脱去しない。ゆえに四季を通じていつも有効である。そしてこの植物にはかく刺はあるが、その再羽状複葉はその姿その色まことに眼に爽かであるばかりではなく、さらに大きな花穂を葉間に直立させて黄花を総状花序に綴るの状また大いに観るに足り、塀上の風趣転た掬すべきものがある。私は先年伊勢宇治の町で偶然珍らしくこの有様を見、その家主人の風流と慧眼とに感服したことがあった。
風流で盗賊防ぐ思い付き
上に記した土佐高知の今井貞吉君は今は疾くに故人となったが、同君は多識なうえにすこぶる器用でかつ多趣味な人で、よくいろいろのことに通じていた。その中でも特に古銭に精しく斯界での大家であった。『古泉大全』と題する大著があって、その書中の古銭図は、もし間違いがあっては正鵠を失するといって、みな自身で手を下して丁寧正確に彫刻し、その書の印刷もまた活版印刷機を室内に用意し、下女などに手伝わせて自家の座敷、畳の上で印刷したものである。