Japanese reading practice

Read classic Japanese books with furigana

ja-reading.com

Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.

えのきものがたり

榎物語

山本 周五郎

Read 榎物語 (えのきものがたり) by 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 33,519 characters · 67 screens

Aozora Bunko

と云った者もあった、

「この辺で見かけたらぶち殺すぞ」

地面にのびたまま、彼はさわに逢いたいと思った。死ぬまえに一度だけ、逢ってさわの声が聞きたいと思った。死ぬ、ということにはなんの根拠もなかった。こんなひどいめにあわされて、もう生きてはいられない。漠然とそう思ったからだろうか、どんなことをしてでも、一度は逢わずにはおかないぞ、と彼は自分に誓った。――国吉は五日間、裏の叢林の中にひそんでいた。空腹は殆んど感じなかったし、耐えきれなくなれば山柿があった。その野生の小粒柿は渋を採るだけで、子供もあまり欲しがらないが、霜に当ると甘くなるので、飢えをしのぐには充分であった。隠れた場所は河見家の背後にある山で、そこから段登りにうしろへ高くなってい、杉や檜や、さらに高くは樺、などの密林が茂っていた。

さわは三日間、その居間に禁足されたのち、許されるとすぐ、榎のところへいってみた。国吉が放逐されたことは聞いていたが、そのまま彼が去ってしまうとは思わなかった。この土地から出てゆくまえに、必ず一度は逢いに来るだろう、と固く信じていた。二人が逢うとすれば、大榎のところ以外ではない。