Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
たなださいばんちょうのかいし
橘外男ワンダーランド 怪談・心霊篇
橘 外男
Read 橘外男ワンダーランド 怪談・心霊篇 (たなださいばんちょうのかいし) by 橘 外男 (たちばなそとお) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 112,181 characters · 219 screens
地下工事現場には、大勢の人夫が入り乱れて、福岡の貝塚合名会社地所部とした貨物自動車が、十二、三台、盛んに取り毀した工事場の鉄梁や、鉄柱を積み込んでいた。
福岡に建つ大きな六階建てのデパートの、建築資材にするのだという。湖の回りにも、人夫や測量師体の男たちが入り乱れていた。
邸の焼け跡では、淋しく花をつけた蔓薔薇の二、三枝を折りとった。あとで、石橋氏の墓前に、供えたいと思ったからである。
大分雑草も刈りとって、自動車道路が設けられてあるから、昔日の高原の趣きとは、いくらか違っているかも知れぬ。待たせておいた車を駆って、いよいよ湖岸西北方、故人が涙を呑んだ例のマンガン鉱山を、南方の碧空に仰いだ小山の麓に、石橋弥七郎氏の墓を訪う。
水番小屋より、ここまで二十一丁……それがこの辺産出の三根石というのであろう、鈍い紫色の膚を光らせて、さして大きからぬ墓一基、黙々としてそそり立つ。
訪う人も来る人もなく、ただ一基……折しも陽雲にかくれて晩春の気蕭条! ここに数奇の運命の人眠る。裏の林に名も知れぬ小鳥啼いて、鳥の心……石橋氏の心……ただ何となく、涙のしたたり落ちてくるような気持がする。