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たなださいばんちょうのかいし
橘外男ワンダーランド 怪談・心霊篇
橘 外男
Read 橘外男ワンダーランド 怪談・心霊篇 (たなださいばんちょうのかいし) by 橘 外男 (たちばなそとお) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 112,181 characters · 219 screens
小さな茶碗に、苦味の勝った強い珈琲をドロドロに淹れて、それが昨日から何にも入っていない胃の腑へ沁み込んで、こんな旨い珈琲は、口にしたこともありません。
その珈琲を御馳走になってるところへ、にこにことほほえみながらまた一人、美しい娘が現れて来たのです。
「ジーナ、お前もかけて、珍しいお客様のお話でも、伺ったら?」
と紳士が勧めましたが、スパセニアが働いてますから、わたしも手伝って! とか何とか、いったようでした。そして顔を染めながら、逃げるように行ってしまいました。その娘の美しさにも、私は眼をみはらずにはいられませんでした。
二十一、二か、三ぐらい、さっきの娘の姉なのでしょう、妹とよく似た面差しはしていますが、これは妹と違って細面の、艶やかな瞳……愛らしい口許……隆い鼻……やっぱりふさふさとした金髪を、耳の後方へ撫で付けて、丈も妹よりは、心持ち高いように思われます。妹の利かなそうな様子に較べて、見るからに温和しそうな、混血児にも似ぬ淑やかさを感じました。
紳士といい今の姉娘といい、またさっきの妹といい、いずれ劣らぬ美しい上品な親娘が、訪う人も来る人もない淋しい山の中の一軒家で、一体、何をしているのでしょう? そして、形も崩さず、礼儀正しく生活している不思議さ? しかも今の父親の話によれば、まだ東京へ行ったこと