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ぶそうせるしがい
武装せる市街
黒島 伝治
Read 武装せる市街 (ぶそうせるしがい) by 黒島 伝治 (くろしまでんじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 115,959 characters · 234 screens
いつもはにぎやかな大通りが、がらんとして、犬の子一匹も通っていなかった。時々、銃声がぱッぱッぱときこえた。
「あれ見なさい! あれ……南軍め、沢山やられとる。」
子供をおぶって、走せて行く、鬚の男が、馳せながら、郵便管理局の構内を指さした。
「何だろう?」
すゞはちらっと、指さゝれた方へ顔を向けた。
鉄条網を引っぱった柵の中に、武装解除をされた紺鼠の中山服の兵士達が、両手を後に縛られて、獣のように、呻いたり、わめいたりしていた。何十人いるか? 何百人いるか、数がわからない。着剣した銃を持って、四五人のカーキ色の兵士が、ばらばらと立っていた。
ふと、俊が、何か叫ぶと、彼女の手を重く引いて、地上にがくッとへたばった。
「どうしたの?」
俊は、流弾に脚をうたれていた。白ッぽいメリンスに血がにじんでいた。
「どうしたの?」
傷の痛さよりも、弾丸にあたった意識が、すっかり、張りつめた気持を奪ってしまった。俊は、どうしても立ちあがれなかった。ほかの者はどんどん彼女達を抜いて走った。
すゞは、妹に、自分の肩へすがらして、背負って立上った。二人だけが一番最後に取り残されていた。