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ぶそうせるしがい
武装せる市街
黒島 伝治
Read 武装せる市街 (ぶそうせるしがい) by 黒島 伝治 (くろしまでんじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 115,959 characters · 234 screens
逃げる男が二人の方へ突進してくる。従って銃口も二人が立っている方向へむけられている。と、瞬間に感じた。
疲憊しきった白露兵は、銃声にも無関心だった。振りむきもしなかった。
突進して来る男は、すぐ二人の前に来た。山崎は、眼のさきへ来た時、それが、陳長財だと気づいた。
「なに、まご/\してるんだ。馬鹿野郎!」彼は、いまいましげに怒鳴った。
「何をしてやがったんだい、今までも!」
が陳は、敏捷に山崎の前をとびぬけて、猿のように、家と家との間の狭い、暗いろじへもぐりこんでしまった。
「馬鹿野郎! 本当に仕様のない奴だ! 畜生!」
「知ってる奴でしゅか?」
小山は訊いた。
「あいつですか、あいつは、手におえん奴ですよ。使ってる奴ですがね、滑稽な奴で、二時間もどっかでぐず/\してやがって……」
陳長財は、現在、山崎にとって、ごく必要な人物だった。彼は、もと、上海の碼頭苦力だったという話である。中津が、青島から帰りに、周村でつれてきて、呉れてよこした男だ。
中津は陳を呼んで、魚心があれば水心だ。それ相当のむくいをしてやる。が、俺れと、俺れの兄弟を裏切るような行為をしくさったくらいにゃ、生かしては置かないぞ。