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ぶどうむもん

武道無門

山本 周五郎

Read 武道無門 (ぶどうむもん) by 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 12,130 characters · 24 screens

Aozora Bunko

五

五

小弥太は濠を越して向うの城櫓を見ていた。その櫓には四五人の人影がいて、さっきからこちらを見ているようすだったが、いま伊右衛門が呼びかけたとき、櫓の人たちが俄かに何処かへ走りだしたのである。「……殿、気付かれたようでございます」小弥太は振返って云った。

「気付かれたとは、いまの馬上の侍か」

「あの櫓でございます」小弥太は眼で知らせながら、「今まで四五人いた様子でございますが、一人を残して、みんな何処かへ走って行きました」

「そうか、……伊右衛門ひきあげるぞ」

「宮部、慌ててしくじるな」

三人は静かに巾下門の方へ歩きだした。

櫓にいたのは大納言義直であった。彼は三人が濠の深さを計っているのをみつけた。そして直ぐに岡崎の諜者だと認め、――怪しい奴だ、恐らく岡崎の監物の手先に違いない、厳しく手配して召捕れ、やむなくば討止めても仔細ないぞ。と命令したのであった。

三人が城外へ出て、五条橋の辻を東へ曲ろうとしたとき、小馬場の方から外濠添いに、けたたましく鳴子が鳴りだした。そして、大手先と巾下門と、両方から一時に、追手の迫って来るのが見えた。……挾撃である。然も鳴子はかなり広い範囲に連絡しているとみえ、次から次へと、到るところの番所、木戸へと鳴り伝わってゆく、それにつれて警護の人数が、ばらばらと繰り出して来た。