Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
しんだちどり
死んだ千鳥
吉川 英治
Read 死んだ千鳥 (しんだちどり) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 15,539 characters · 32 screens
(世に浮かび出る時が来た)
と云っているのは、寛永、正徳以来、ここ五、六十年間の通し矢は、御三家や各藩士の間でばかり競技が行われて来ていたが、今度は、遍く天下の隠れたる弓仕に、あの曠れの場所が与えられ、藩士以外の上手が見出される事になったのを歓んでいるのだった。
(――時節が来た)
平田賛五郎も、はっきりとそれを感じている。彼とても、妻の云うように、決して、引っ込み思案が天性ではない。
いや、男の沈湎には、妻以上の欝勃がつつまれている。
――だが、さし当って、その仲間へ加入して京都へ上洛るには、どうしても、四、五十両の金は入用だった。三十三間堂の堂衆や帳前という役目の者に、心付けも要るそうであるし、加入金は二十両はどうしても調えて行かねばならない。その他、路銀、身支度、逗留費なども、今の手許では、一両すら出来る的はない。
(そんな事仰っしゃっていては、生涯、仕官する途はつきませぬ)
墨江はそういうが、それでは、金をどうするかといえば、それは勿論、彼女にも何の成算はないのである。
彼女はただ――女ごころに――殊にそういう曠れがましい事は好きだし、又性来が勝気だし――一面には又、浪人して出て来た故郷元に対しても、ここで良人が、名誉を世に揚げてくれればという射倖心も手伝って、