Japanese reading practice

Read classic Japanese books with furigana

ja-reading.com

Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.

えどさんごくし

江戸三国志

吉川 英治

Read 江戸三国志 (えどさんごくし) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 577,271 characters · 1141 screens

Aozora Bunko

「とにかく往来じゃ話ができないから、先生の家まで行きましょうよ」

「えっ、わしの家へ来るッて言うのかい」

「そのつもりで、手土産のかわりに、少しばかり御馳走を買って待っていたのよ」

「こいつはどうした風向きだろう」

先生は酔わないうちから陶然と鼻毛を伸ばしてしまいました。

細い露地のドブ板を踏んでいると、二枚の板戸を閉てた先生のねぐらが、何事もなく待っていて、そこに掃溜へ鶴のような若い女を迎え、何はなくとも春のようで、行燈の明りまでがいつもの晩より明るい気がする。

お蝶が、たすきをかけて、酒の支度をしてくれるのを見ると、先生は感極まって、幾日も掃いた事のない箒を持ち、後の酒の美味さを夢みながら、

「正月め、おれを驚かそうと思って、不意討にやって来やがった」

どうもいつもの不性に似ず、働くことと言ってはない。

その有様を格子の外に立って眺めながら、

「おや、馬春堂の家へお嫁が来たのかしら?」

と、はいりかねている様子の男は、以前からここへは時折遊びに来るお人好しの率八であります。

馬春堂の家の常にない空気をのぞき込んで、率八は例の剽軽な口調です。

「先生、今日はたいそうお宅の中が明るいね」